トンネル入口の男性


隣の県に遊びに行くため、朝から車で国道を走っていた時の話です。

この国道は冬に雪が積もるので車線の幅が広く、登坂車線も有るので見通しも良く、県境にあるトンネルの入り口がかなり手前からでも見えていました。
そのトンネルが近づいて来た時、入口で大きく手を振っている男性の姿が見えました。

あんなに手を大きく振っているのは、きっとトンネル内で事故か車が故障してるんだろう。そんな風に思いました。自分の前には数台の車がいて、直ぐ前はマイクロバス、後ろに車はいません。手を振る男性のいるトンネル入り口が近づいて来ましたが、先頭の車は一向にスピードを緩める気配がありませんでした。私の前を走っている車は、どの車もスピードを緩める事もなくトンネルに入って行きました。
あんなに一生懸命手を振っているのに、皆何で気にする気配すらないのかと疑問に思いつつ、私はスピードを緩め初めていました。前を走っていたマイクロバスもスピードを緩める気配はなく、私の車との車間距離は随分広がっていきました。
「何で皆あの人を無視する?」と思いながら運転していると、私の前のマイクロバスが男性の前を通り過ぎました。

私から一瞬見えなくなったその場所、男性が立っていたはずの場所に見えたのは、白い盆灯籠と花束でした。

「え?さっきの人は?」
トンネルに入る手前は大きく右にカーブしているので、マイクロバスが通り過ぎるまで男性の姿はバスに隠れて見えなかったのですが、通り過ぎた入口には…白い盆灯籠と花束。
自分でも何が起きてるのか理解出来ず、「さっきの人は?」「何で盆灯籠?」と困惑しながらトンネルの中に入りました。

…すると突然車のエンジンが停止…‼︎

「さっきまで普通に走っていたのに…!!」「何で?何で?」
MT車だったのでクラッチ踏んでキーを回すのですがエンジンかからない…。惰性で車は暗いトンネルの中を進んで行きました。パニックになりながら何回かキーを回していたら、何とかエンジンがかかったので、一気に加速してトンネルを抜けました。

サイドミラーもルームミラーも怖くて見れなかったし、一刻も早くトンネルから出たい一心でした…。

「あの男性は?」「何でエンジン止まった?」

マイクロバスに追いつくまでずっと頭の中はパニックになってました。
車の助手席には彼女がいたのですが、彼女はトンネル手前から私が何か言ってる事を変に思っていたみたいです。彼女には男性が見えていなかったから…。

帰りは別のルートで帰りました。そして祖母にこの話をしたところ、「あんたに連れて帰ってもらいたかったんだろうね」と…。

白い盆灯籠は初盆です…。花束もまだ新しかった…。

やっぱりあの男性は家に帰りたくて私の前に現れたんでしょうか…。

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体験集心霊

Posted by 山之内